見谷昌禧のプロフェッショナルの視点 2006/2007
オーレ世界選手権特集
男子・回転
1位、マリオ・マット(AUT) 2位、マンフレッド・モェルグ(ITA) 3位、ジャン・バプティスト・グランジェ(FRA)
 2月17日、男子回転レ−スが開催された。天候は曇り。気温も雪温も大会始まって以来の暖かさで、気温0度、雪温−1℃。外国では日本と違って曇りの日は暖かくなることを知っておくことだ。一方、晴れると予想外に寒い日となる。

 レースの予想としては、オーストリアチームとスェーデンチームとの争いに、いかにしてノルウェーチームとアメリカチームが加われるかと見ていた。結果から見ると、オーストリアとノルウェーの争い、スェーデンは自滅した感がある。意外なチームの健闘が目立った。 

 回転コースも他のレースと同じくウェーブが多く、旗門構成の組み合わせによって、見た目よりもセットは以外に難しいものであった。とくにこのレースでは、オープンテレグラムで落差の少ないセットが立てられていたのが特徴。この部分での多くの選手達がミスを犯していた。

 1本目、ターン数71。セッターはカナダのコーチ、M・グスタフソン。全体的にはリズミカルな旗門構成に見えたが、オープンゲートにキーポイントを設けていた。

 第1シードの選手6名がコースアウト。ビブ20番の選手がスタートして10名の選手がミス。ビブ1番でスタートした本命のベンジャミン・ライヒ(AUT)がコース後半のオープンゲートでリズムを崩してタイムロス。昨年のライヒ選手では考えられない凡ミス。

 ビブ2のイェンス・ビッグマルク(SWE)選手。ここまでのレースで絶好調、ランキング1位でこの大会を迎えた。インサイドポールへの入射角を誰よりも鋭いコース取りでの滑りをしすぎて、コース後半のゴール前の落差の少ないオープンゲートでミスを犯した。スウェーデンのエースの余りにも早くのミスに誰もが驚きを隠せなかった。

 ビブ3のマリオ・マット(AUT)選手が、驚くほどの素晴らしい滑りをした。テクニック的には、オープンゲートの落差の少ない部分で、鋭い入射角をあえてとらずに、スキーの回しこみの動きを使って安全なコース取りを行なったのは賢明策であった。この回し込みのターンは、マット選手の得意技とも言えるのもので、このセットこそ彼のためのコースセットだったようでベストタイム。

 多くの選手達がミスでコースアウトする中で、ビブ10のフェリックス・ノイロイター(GER)選手は、安全な滑りに徹して1本目ベスト2。ビブ21のマンフレッド・プランガー(AUT)選手は、強引な滑りからスキーのサイドカーブを利用した滑りで3番目のタイムを出して気を吐いた。ビブ1のライヒ選手が4位。ビブ22のジャン・バプティスト・グランジェ(FRA)選手は、ポジションを高く保って鋭い入射角での滑りで5位を確保。ビブ15のイタリアのマンフレッド・モェルグ選手も強引な滑りをしてバランスを崩しながらも粘り強くすべり抜いて6位。

 各国のエースたちは期待されていたが、いとも簡単にミスを犯してコースアウトしたのでレース内容からみて面白みが失われたように思えたが、これまでにオーストリアの男子チームに金メダルの獲得がない。マット選手が、2位に1秒14大差を付けたので、気の早い観衆は2本目ゴールさえすれば優勝が間違いなしと読んでいたし、このレースで“悲願の金メダル”をマット選手が獲得するであろうかに興味の方向が向けられた。また、このようなビックゲームの1本目でこれほどの大差をつけた状況はなかったと思う。

 ライヒとプランガー選手の逆転を狙った滑りを期待しながら、若手のノイロイターとグランジェの挑戦にも期待していた。

 2本目、ターン数70。.セッターはイタリアチームのコーチ、C・ラベット。ポイントは、コース前半部にセットされたへヤピンゲートの後のオープンゲートがオフセットが大きく難しい。コース中半部の緩斜面にヨコ方向へと移行する旗門に変化を持たせていた。さらに、コース後半にオープンゲートの落差の少ない旗門がセットされていて滑りのリズムを崩されていた。

 2本目のレースもコースアウトする選手が多く30人中9名。とくに、カレ・パランダー(FIN)選手とイヴィツァ・コステリッチ(CRO)選手のミス。地元のスウェーデンチームの選手のタイムが伸びない。一方、ノルウェー選手、ビブ41のトルルス・オーヴェ・カールセン選手が7位。ハンスペテル・ブロース選手が8位と健闘。一時はトップに立ったのは驚きだ。だが、すぐにカナダのミカエル・ジャニック選手に抜かれた。ジャニックは6位。

 ここからトップ争いが始まった。1本目6位のモェルグ選手が快調な滑りでこの時点でトップに立つ。1本目5位のグランジェがインサイドポール目掛けて鋭いターンを仕上げてゴール。だがモェルグ選手を抜けずに2位どまり。1本目4位と5位のライヒ選手とブランガー選手は、先の2人を抜けなく4位と5位。最後の2人の滑りを待つ。

 1本目2番目のノイロイター選手、コース中半のオープンゲートでミスを犯して最高のチャンスを一瞬にしてフイにしてメダルが消え去ってしまった。

 最後の選手、マット選手の滑りはスムースで、2本目もベストタイムで圧勝した。長い間マット選手を追い続けてきたが、今日の滑りは彼の生涯で最高の滑りであった。途中で挫折しないで、この日まで選手を続けていて良かったと思ったことだろう。大きな大会に付きもののベテラン選手の勝利は、何時見ても美しい。おめでとうと祝福したい。

 1位、マリオ・マット
 この大会で初めての金メダルをオーストリアチームにもたらし、パワーチーム・オーストリアの面目を保った。本人は6年前のサン・アントン(AUT)世界選手権に次ぐ2個目の金メダルだ。

 2位、マンフレッド・モェルグ
 本人が一番驚いている事だろう。エースのジョルジオ・ロッカに代っての銀メダルだ。よくぞ頑張ったといえよう。

 3位、ジャン・バプティスト・グランジェ
 決して滑りに派手さはないが、回転レースに勝つためのターンテクニックであるところの入射角の鋭さはピカ一だった。2本目プレッシャーを感じながら快心の滑りで勝ち取った銅メダルだ。

 多くのハプニングが起きたが、いつものことながら勝った選手は勝つべくして勝つた。