見谷昌禧のプロフェッショナルの視点 2006/2007
オーレ世界選手権特集
男子・大回転
1位、アクセル・ルンド・スヴィンダル(NOR) 2位、ダニエル・アルブレヒト(SUI) 3位、ディディエ・キューシュ(SUI)
 2月14日、男子大回転レースが行なわれた。天候は曇り、風が強い。今日も寒く気温スタート地点:−12℃、ゴール地点:−18℃。雪温スタート地点:−10℃、ゴール地点:−16℃。

 1本目、ターン数47、セッターはスェーデンのA・プレン。旗門構成としては、リズムに乗りやすいものであったように思えるが、選手達の滑りを見ていると全体的にオフセットが大きく、体力勝負に見えた。難しい部分は3箇所あった。ウェーブの頂点から次の旗門へ落差が小さく、オフセットの大きい旗門でのコース取りが難しくセットされていた。

 レース展開として、調子を上げてきたノルウェーのアクセル・ルンド・スヴィンダル選手と今いち調子が上がっていないオーストリアのベンジャミン・ライヒ選手との争いがどのような展開になるかが興味の的であった。

 ビブ1番のライヒ選手が、19旗門目から20旗門目でのウェーブの大きい部分にオフセットの大きい旗門、左ターンから踏み変えながら右ターンのキッカケを付けながら滑る部分で、入射角の方向を間違えるミスを犯してコースアウト。本命が圏外に去り、大波乱模様のレースになると予想された。

 もう一つのキーポイントは、ゴール前の斜度の少し急な部分の4双旗で組み合わされたオープンゲートにあった。ゴールが目に入り急いでゴールへと向かいたいところであるが、オフセットが大きくスキーの回しこみを丁寧に行なってから次の方向に進むようにしながら滑ることが要求されていた。ゴール目前にしながらコースアウトした選手が数名いた。

 このような状況下であったので、案の定、1本目のベストタイムは、コンビで優勝したスイスのビブ23でスタートしたダニエル・アルブレヒト選手。調子の良い選手にはスタート順など関係が無いといわんばかりの見事な滑りを見せた。

 2位には、ビブ2のカナダのフランソワ・ボーク選手が意地をみせた。3位のタイムは、ビブ19のスイスのマーク・ベルトー選手、脚力に物を言わせてゴールイン。ライヒ選手のライバル、スビンダル選手は1本目は慎重なコース取りで4位に付けた。

 強豪オーストリアの不振はこのレースでも続いていた。10位以内どころか、一番良い成績でビブ9のライナー・シェンフェルダー選手は21位。ビブ12のヘルマン・マイヤー選手は22位。ビブ11のハンネス・ライヒェルト選手は、ライヒ選手と同じところでコースアウト。かつて、ビッグゲームの大回転レースで、オーストリアチームのこのような無様な現象が起きたことがあったであろうか。私の記憶にはない。

 2本目、ターン数47。セットのキーポイントは、スタート直後のオフセットの大きい旗門が3双旗と、コース中半の左ターンで大きなウェーブの部分をスキーを浮かさないようにしながら滑り抜くこと、さらにコース後半にかけて左右に大きく振られた旗門構成にあった。このセットは、1本目以上に体力勝負だった。

 ベストタイムは、1本目28位のカナダのジョン・クチャラ選手で、12位へとステップアップした。大健闘したのは、1本目7位のスイスのディディエ・キューシュ選手、3位に割り込んできた。ここまで、不振のアメリカのテッド・リゲティ選手が、2本目3番のタイムであわや3位を確保するのではないかと思わせる成績は賞賛に値いする(4位に留まった)。

 1位 アクセル・ルンド・スヴィンダル(NOR)
 2本目2番目のタイムであったが、快心の滑りで逆転優勝を遂げた。2本目の勝負所は、スタート直後の3双旗のオフセットの大きなオープンテレグラムにあった。この部分を少し大回りターンで滑り、体のバランスを確保しながら次の旗門へとスピードを繋げていた。この難所を過ぎてからは、残る旗門のすべてのインサイドポールを“体でなぎ倒す”ようにしながら積極的な滑りに徹した。今シーズン、これほどまでに攻撃的な滑りを展開したことは無かったと思う。技術系の種目では、すべてのインサイドポールを“なぎ倒しながら”滑ることが、“一番の近いコース取りをする方法”であるという基本を忠実に実行した結果の勝利だ。

 2位 ダニエル・アルブレヒト(SUI)
 この地に入ってから好調を維持しているだけあって、何をやっても好結果を残せるようだ。だが、この2本目で強敵スビンダル選手がトップになったことを知り、力みが生じてしまったように思える。一つ前のボーク選手のミスを目の辺りにしてのスタート。慎重にスタートしたつもりだったと思うがターンの仕上げ方がスムースではなかた。勝負は、スタートして3双旗目で決まってしまった。この3つのターンは、スピードよりもコース取りが大切。インサイドポールを狙いすぎて、滑りのリズムを崩してしまった。後は、焦りながらの滑りではスビンダル選手に歯が立たない。だが、あの滑りでよくぞ2位を確保したと思う。
 
 3位 ディディエ・キューシュ(SUI)
 1本目7位、2本目6位で3位を獲得した。スピード系に強いだけに、体力勝負で勝ち取った。また、ベテランらしくゴールして他の選手にプレッシャーを賭ける作戦が成功したのだ。

 4位 テット・リゲティ(USA)
 今シーズン、調子が上って来ない焦りがあったであろう。この2本目で初めてリゲティ選手らしい滑りが出来たようだ。2本目3番目のタイムで4位を獲得した。アメリカチームも今ひとつ調子の波に乗れない状態である。